憲 法
自民党結党以来の党是である憲法改正は、9月の菅義偉政権発足後も目立った進展はなかった。憲法改正推進本部の衛藤征士郎本部長が表明した党改憲草案の年内策定は断念に追い込まれ、改憲の是非を問う国民投票の利便性を公選法に合わせる国民投票法改正案は8国会連続で継続審議となった。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急時を想定した現行憲法の課題も浮き彫りになったが、与野党の動きは鈍いままだった。
衛藤氏は18日、党本部で開いた推進本部会合で「憲法改正を誘発させるための動きをいろいろやった」と振り返りつつ、改憲草案について「(来年の)通常国会がスタートしたら党独自の草案を用意する。総務会の了承も必要だ」と述べ、年内策定断念を正式に表明した。
断念の背景には、野党に対する与党の遠慮がある。先の臨時国会では、自民党の議論が先行した場合、憲法審査会などの運営に影響すると立憲民主党などから牽制(けんせい)されたとして「自民党国対から策定をとめられた」と推進本部幹部は明らかにした。
衆院憲法審では自由討議や国民投票法改正案の質疑が行われたが、立民や共産党などは改正案の採決に応じなかった。自民、立民両党は次期通常国会で「何らかの結論を得る」と合意し、与党は採決が約束されたと主張するが、国会が紛糾すれば野党が応じる保証はない。
新型コロナの感染拡大で明らかになった憲法をめぐる課題についても具体的な論議は進まなかった。
憲法は、本会議で議事を行う上で最小限必要な定足数を「総員の3分の1以上」と定め、国会議員の任期も具体的に規定している。コロナの感染拡大といった緊急時には、これらの規定が国会を動かす上で障害となりかねず、自民党の柴山昌彦幹事長代理や山田賢司衆院議員は課題を整理するよう提起した。
山田氏は取材に「すでに国会議員にもコロナの感染者が出ている。議場で濃厚接触になれば国民生活に直結する予算案や法案の審議ができなくなることも考えられる。憲法の致命的な欠陥だ」と語る。
こうした課題は今年の通常国会から浮き彫りになっていたが、12月に閉会した臨時国会に至るまで一向に議論が深まることはなかった。
(産経新聞より抜粋)