令和3年05月21日(金)
その他
LGBT法案 保守派異論 了承見送り
自民党は20日、「性的指向・性自認に関する特命委員会」(委員長・稲田朋美前幹事長代行)などの合同会議を党本部で開いた。与野党の実務者で合意した同性愛者など性的少数者(LGBT)への理解増進を図る法案を審査したが、保守派を中心に異論が相次ぎ、了承は見送られた。問題視されたのは「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」とする法案の目的と基本理念だ。もともとの自民案は医学用語として使われる「性同一性」としていたが、公明や立民の要請でより概念の広い「性自認」に修正された。
合同会議では心と身体の性が一致しないトランスジェンダーの課題も指摘された。山谷えり子元拉致問題担当相は「男性の身体で、心が女性だからといって女性の競技に参加してメダルを取ったり、そういう不条理なこともある」と記者団に語り、海外の事例を調査する必要性を訴えた。
保守派内には、個人の判断に委ねる色彩が濃い「性自認」という言葉への違和感もある。ある中堅議員は、トイレや更衣室の利用で混乱が生じると懸念を示し「LGBTへの配慮は必要だが、全てを認めなければ『差別』となると、訴訟が乱発する社会になりかねない」と警鐘を鳴らした。
保守派が警戒する背景には、民主党政権などで検討された人権擁護法案の苦い記憶もある。人権侵害の定義が曖昧で、恣意的な運用や「表現の自由」の規制などへの懸念が噴出して廃案となったが、自民ベテランは「LGBT法案も形を変えた人権擁護法案になりかねない。拙速な議論は避けるべきだ」と語った。
(産経新聞より抜粋)