憲 法
加藤勝信官房長官が憲法改正に積極的な発言を繰り返している。踏み込んだ発言を控える「慎重居士」の加藤氏だが、緊急時に限って政府の権限強化可能とする緊急事態条項の新設に意欲を見せる。新型コロナウイルス収束に向けたワクチン接種に一定のめどが立ち、次期衆院選後を見据えた地ならしを図る思惑もありそうだ。
加藤氏は19日、静岡県知事選の応援演説のため浜松市を訪れ、雨が降りしきる中、コロナ対応で政府が直面した病床確保について「都道府県と市町村、国との連携は本当に難しいことを痛感した」と述べた。
この日は憲法には言及しなかったが、コロナ対策との関連で緊急事態条項の新設に触れることが多い。
11日の記者会見では「新型コロナによる未曾有の事態を全国民が経験し、緊急事態の備えに対する関心が高まっていることは絶好の契機だ」と強調。コロナ禍で飲食店が苦境にあえぐ現状を「絶好」と表現したことを問題視する質問には色をなして反論した。これに先立つ8日にも東京都内のホテルで講演し、緊急事態条項の必要性を訴えた。
加藤氏が自らの主張を明確に打ち出すのは珍しい。衆院解散・総選挙について問われても「コメントは差し控えたい」などと言質を与えなかった。その加藤氏が護憲派から強い反発を招く恐れもある緊急事態条項新設に向けた発言を繰り返していることに、周囲は驚きを隠せない。側近は「衆院選後の流れを作ろうとしたのではないか」と解説した。
現在のコロナ対策はほとんどが政府からの「お願いベース」で強制力は弱い。首相は4月23日の記者会見で「緊急事態に対応する法律を改正しなければならないと痛切に感じている」と訴えた。加藤氏も首相と同じ思いだ。
加藤氏は将来の自民党総裁選出馬に意欲を隠していないが、党内には「目立ちすぎもダメだが、あまりに目立たないのもダメだ」(ベテラン議員)との声もある。改憲に向けた緊急事態法制の整備に道筋を付けられれば、総裁候補としての存在感が増しそうだ。
(産経新聞より抜粋)