伝統・文化
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定は違憲として、東京都内に住む事実婚の男女3組が起こした家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は23日、規定は「合憲」とする判断を示した。最高裁は平成27年にも夫婦同姓を定めた民法の規定を合憲としており、今回は2度目の判断。15人中4人は「違憲」とした。
民法の規定は明治時代から続いており、社会情勢の変化がどう判断されるかが焦点となった。
最高裁は決定理由で、27年の判決以降女性の就業率の上昇▷管理職に占める女性の割合の増加▷選択的夫婦別姓への賛成割合の増加―などの社会や国民の意識の変化が見られたとしつつも、「27年の判断を変更すべきとは認められない」と指摘した。
一方で、夫婦の姓をめぐりどのような制度が妥当なのかという問題と、憲法違反かどうかを裁判で審査する問題とは「次元が異なる」とした。その上で、「国会で論じられ、判断されるべき事柄だ」と、改めて立法府の取り組みを促した。
合憲とした裁判官のうち3人は補足意見で、「今回の判断は、国会での選択的夫婦別姓制度を含む法制度の検討を妨げるものではなく、国民のさまざまな意見や社会の状況変化などを十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待する」と述べた。
一方、違憲とした弁護士出身の宮崎裕子裁判官と、学者出身の宇賀克也裁判官は、「結婚に対する当事者の意思決定は自由かつ平等であるべきで、規定は不当な国家介入に当たる」などと述べた。
27年の最高裁判決では、家族が同じ姓を名乗るのは日本社会に定着しており、民法の規定に男女の不平等は存在しないと認定した。当時は裁判官5人が「違憲」とした。
今回の家事審判を起こした事実婚の3組は、婚姻届に「夫は夫の氏、妻は妻の氏を希望します」と付記して自治体に提出したが、不受理となり30年3月、東京家裁などに家事審判を申し立てた。申し立ては却下され、2審東京高裁でも棄却されたため、最高裁に特別抗告していた。
結婚後の姓をめぐっては、8年に法相の諮問機関・法制審議会が、選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正案を答申したが、法案提出には至らなかった。今年に入り自民党がワーキングチームを設置し本格的な議論が始まったが、実現へのめどはたっていない。
(産経新聞より抜粋)