伝統・文化
戦後日本の家族を形作ってきた民法の夫婦同姓の規定について、最高裁は23日、再び「合憲」との判断を示した。前回の合憲判断から6年。この間、女性の社会進出は広がり、選択的夫婦別姓制度を求める機運が高まるなどしたが、最高裁は結婚や家族に関する法制度の在り方は、司法の場ではなく、国会で議論される問題と改めて示し、判断を覆すことはなかった。
夫婦同姓を定めた民法の規定をめぐる2度目の憲法判断。主要な争点となったのは、平成27年12月の合憲判断以降の社会情勢の変化をどう捉えるかだった。
申立人側は、内閣府による29年の調査で、選択的夫婦別姓導入に賛成する人の割合が42.5%となり、反対派29.3%だったことを重視。働く女性の割合や、共働きで世帯の増加などは著しいとして、「27年判決の合理性は失われた」と主張してきた。
ただ、最高裁が法令を違憲と判断するのは、憲法の要請に真正面から反対するほどの不合理が生じている場合に限られる。
■3人が補足意見
23日の最高裁の決定では、国会の役割が強調された。深山裁判官らは補足意見で、「国民の意識の変化については、国会で評価、判断されるのが原則」とし、選択的夫婦別姓の導入をめぐる最近の議論の高まりについても、「まずは国会で受け止めるべきだ」と指摘した。
憲法では「法律は、個人の尊厳と男女の本質的平等に立脚して、制定されなければならない」と定めており、立法の裁量権にも制限がある。深山裁判官らは、今後の社会情勢の変化などによっては、「一般論として、立法の裁量権の範囲を超えて、憲法に違反する評価されることもあり得る」とも付言した。
■意見は15人中4人
23日の決定では15人中4人が民法の規定について「違憲」とする意見を付けた。前回の最高裁判決では5人が「違憲」としたため、1人減ったが、多様な家族観を象徴する司法判断となった。
弁護士出身の草野耕一裁判官は、「選択的夫婦別姓を導入することによって向上する国民の福利は大きいことが明白。導入しないことは、あまりにも個人の尊厳をないがしろにしている」と指摘。検察官出身の三浦守裁判官は、「家族の在り方は極めて多様化しており、家族の一体性や子の利益をなどを考慮しても、夫婦同姓の例外を許さないという合理性は説明できない」との意見を述べた。
(産経新聞より抜粋)