安全保障・
領土問題
陸上自衛隊第1空挺団は7月29~30日にかけ、沖縄に駐留する米陸軍特殊部隊と米領グアムのアンダーセン空軍基地で、航空機からパラシュートを使って降下する共同訓練を実施した。空挺団が米軍機で国内を出発し、そのまま直接海外で空から降下するのは初めて。訓練は敵の島嶼部への侵攻に対処する想定で、中国が活動を活発化させている南西地域の態勢を強化するため、日米の即応力を強める目的がある。
空挺団、横田からグアムへ
陸自習志野駐屯地(千葉県)を拠点とする第1空挺団は自衛隊唯一のパラシュート部隊で、29日深夜に米軍横田基地(東京都)から輸送機2機で出発した。30日早朝、アンダーセン空軍基地の上空数百メートルからパラシュートで降下し、飛行場を確保するという想定で一連の行動を確認した。
今回の訓練の特徴は、東京―グアム間約2600キロという長距離を移動し、直接飛行場に降下した点だ。空挺団は米アラスカ州で米陸軍と実動訓練「アークティック・オーロラ」を行い、海外での降下経験を積んでいるが、その際は現地で航空機を乗り換えている。
陸自は今回の訓練を、3月の日米防衛相会談で確認した「各種訓練の高度化」の一環と位置付けており、吉田圭秀陸上幕僚長は7月29日の記者会見で「島嶼防衛を考えれば極めて重要な戦術能力。日米の連携を戦略的に示すものだ」と強調した。
陸自にとって、中国が活動を強めている南西地域の態勢強化は喫緊の課題だ。台湾から約110キロの距離にある与那国島(沖縄県与那国町)には平成28年に駐屯地を開設。宮古島(同宮古島市)にも同31年に駐屯地をつくり、石垣島(同石垣市)でも計画を進めている。
台湾有事が起きれば、こうした島々で構成される先島諸島を中国が占拠にかかるシナリオも指摘されているだけに、空挺団が長距離を移動し飛行場に降下、制圧する能力は重要性を増すとみられる。
(産経新聞より抜粋)