安全保障・
領土問題
自民党が20日から、外交・安全保障政策の根幹となる「戦略3文書」の改定に向けた検討作業を本格化させる。改定は北朝鮮のミサイル技術の高度化や中国の軍拡といった安全保障環境の急変に対応する目的があり、岸田文雄首相は敵基地攻撃能力の保有など「あらゆる選択肢を排除しない」としている。政府は来年末までに改定を終える方針で、自民党は日本の防衛の転換点と位置づけ、5月末までに提言をまとめる。
党内で3文書改訂に向けた検討作業を行うのは、安全保障調査会(会長・小野寺五典元防衛相)となる。20日には3文書のあり方など概念の整理を行い、来年1月からテーマごとに有識者からのヒアリングを含めた分析を始める。5月末までに論点を整理し、政府への提言をまとめる。
国家安全保障戦略(NSS)の改定は平成25年12月の策定以来初めてとなる。同調査会で検討するテーマは中国や北朝鮮情勢、人権外交、海外への装備移転、防衛産業支援など多岐にわたり、会合は週1回以上のペースで開かれる見通しだ。党幹部は「検討課題は山積しているが時間は限られている」と語る。
自民党はこれまでも防衛力強化に向けた提言を行ってきた。昨年8月には小野寺氏が座長を務める検討チームが、敵基地攻撃能力を念頭に「相手領域内でも弾道ミサイルなどを阻止する能力」の保有を求めた。首相は就任当初から敵基地攻撃能力に言及しており、自民党側は実現に向けた好機と捉える。
政府は今年度補正予算案で防衛関連の補正予算として過去最大の約7700億円を計上した。防衛相は防衛力強化へ向けた会議も立ち上げ、3文書改定と同時に防衛費増額を目指す。政府は自民の提言を踏まえ、来夏の参院選以降、改定作業を本格化させる。防衛相経験者は「提言ではなるべく高めの球を投げておくことが重要だ」と語る。
一方、NSSは防衛だけでなく外交や経済を含めた国家全体の安全保障方針を示す。NSSへの明記が検討されている経済安全保障についても、自民党では同調査会とは別に高市早苗政調会長がトップを務める経済安保対策本部がある。このため、党内には3文書改定を同調査会だけでなく、党の政務調査会全体で検討すべきだとの声もある。
提言では専門的見地からあるべき防衛力を示すだけでなく、幅広い視点から方向性を示すことも求められる。
(産経新聞より抜粋)