憲 法
憲法改正をめぐる動きが停滞すれば、衆院解散・総選挙に踏み切って国民の信を問う-。26日の臨時国会召集を前に自民党内でこんなシナリオがにわかに浮上している。改憲の是非を問う国民投票の利便性を公職選挙法とそろえる国民投票法改正案の審議に後ろ向きな野党を牽制(けんせい)する狙いが透ける。臨時国会では憲法審査会の開催をめぐる与野党の攻防が注目されそうだ。
「立法府の責任として結論を出さなければならない」。自民党の国会対策を担う森山裕国対委員長は21日、臨時国会で改正案の成立を目指す考えを改めて記者団に示した。
改正案は改憲論議に慎重な立憲民主党や共産党などの抵抗もあって6国会連続の継続審議となっている。自民党幹部は「臨時国会でも憲法論議に応じないならば野党には相当の覚悟が必要だ。憲法審に出てこなければ国民に信を問わなければならない」と強調。政党支持率の低迷から脱し切れていない野党が最も神経をとがらせる「解散」を持ち出し揺さぶりをかける。
改憲をめぐる与野党の神経戦では、衛藤征士郎本部長のもと新体制となった自民党憲法改正推進本部の動向も影響を及ぼしていることは間違いない。
野党は衛藤氏が4項目の自民党の改憲「イメージ案」を年末までに具体的な条文案にする考えを表明したことに鋭く反応し、「自民党が独走をするのであれば国会での憲法論議はできなくなる」(立民の安住淳国対委員長)と批判した。
一方、改正案を臨時国会で成立させるべく慎重に戦略を練ってきた自民党内からも衛藤氏主導の新たな動きには戸惑いの声が聞こえる。国対幹部は「道をつくってから家を建てるべきだ」と述べ、野党を刺激することを避けて改正案の成立を優先すべきだと強調。また、佐藤勉総務会長は20日の記者会見で「野党も(改憲論議の)席に着いていただく環境を整えることが大切だ」と訴え、世耕弘成参院幹事長も「(改憲は)強引にスケジュールを切って無理やり仕上げるという性格のものではない」と慎重な対応を促した。
自民党内で「衆院解散」まで浮上しているのは、野党がさらに態度を硬化させかねない現状への焦りとの見方もある。一方、立民などが条文案づくりを改憲論議に応じないための新たな口実にしているとの指摘もあり、野党の対応が衆院解散の思わぬ引き金となる可能性は否定できない。
(産経新聞より抜粋)